米騒動の真相とは?佐々木さんが語る米業界の裏側

2025年04月24日
 

こんにちは。
広報担当の前原と申します。

農業未経験から、わずか7haの田んぼを40haまで拡大、ビジネスとしての農業を実践している佐々木さんのインタビュー第2回目をお届けします。

今回は、私たちの生活へ大きな影響をもたらしている「米騒動の真相」について、現役米農家の佐々木さんにお話を伺いました。

それでは、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 


目次


1.「米が足りない」は本当か?
2.価格高騰の理由とは?
3.今後の米の価格は?
4.最後に


 

1.「米が足りない」は本当か?



松:2023年秋、「米が足りない」という話題がネットやメディアで広がりましたが、実際のところはどうだったのでしょうか?

佐:確かに話題にはなりましたが、実際には生産量そのものが大きく減ったというわけではありません。猛暑などの影響で若干の不作はありましたが、それ以上に大きいのは、「流通の変化」です。

松:流通の変化とは、具体的にどういったことですか?

佐:例えば、ふるさと納税や個人向けの直接販売、業務用の契約などが増えて、市場に出回らない「見えない米」が増えたんです。

つまり、集荷されずに農家から直接、特定の契約先や個人に届くお米が多くなってきているということですね。




松:なるほど。以前は農協が集荷するのが一般的だったと思いますが、今は変わってきているんですね。

佐:そうですね。うちの農場でも、9月の時点で千件以上の注文が入っていて、すでに在庫を抑えられていました。
つまり、大手業者やスーパーに卸す前に、消費者や契約先に売れてしまっている。

これが、市場に出回らない見えない米の正体です。

松:なるほど、そもそも消費者の目に触れる前に売れている、と。

佐:そう、それだけの話なんです。
「市場に出ない」=「足りない」と勘違いされただけなんですよね。



2.価格高騰の理由とは?



松:では、米の価格が上がったのはなぜでしょうか?

佐:様々な要因が重なっています。
インバウンド需要の増加、猛暑による軽い不作、それに農家が先に売ってしまったことによる流通在庫の減少。
それから、減反政策の影響や、パックご飯向けの需要増加もありますね。

例えば、うちでは某メーカーさんと契約し、もち米を直接販売していますが、これも見えない米の一つになります。




松:農水省が発表していた「消えた21万トン」という数字も話題になりましたよね?

佐:あれも、本当は消えたわけじゃないんですよ。
先に売れただけです。
ふるさと納税や直販、飲食店などに回ったお米が、集荷業者に届いていなかっただけなんです。

松:今の価格は「高騰」ではなく「適正」だということですね?

佐:そうですね。
米の販売価格については「ようやく普通の水準に戻った」と感じてます。
人を雇って、機械を更新して、家族も養ってとなると、60kgあたり3万円から3万5000円くらいが必要。

今までの価格が安すぎたんです。
補助金や副業に頼りながら、なんとか農業を続けている農家も多いですからね。



3.今後の米の価格は?



松:では、今後の米価はどうなると思いますか?

佐:2025年以降は、ちょっと下がるかもしれません。
今の価格を見て「よし、今年は米を作ろう」と考える農家が増えて、増産に走る可能性がありますから。




でも、作りすぎると今度は価格が暴落する。
農産物って、農家の動きに連動して、価格が上下するんです。
だから短期じゃなくて、中長期で見ないと価格の動きが読めないんですよ。



4.最後に



松:今回の米騒動をどのように総括されますか?

佐:「米が足りない」というより、「流れが変わった」ということだと思います。
農家が売り先を多様化させ、消費者もふるさと納税や直販を使うようになった。
そして政策や物流の構造も影響し、結果的に「見えない米」が増えたということです。

令和の米騒動は、そうした構造的な変化の結果だったと感じています。

表面的な品薄の裏には、今の農業のリアルな現状があることを、少しでも多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。




松:今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回は、そんな複雑な状況の中で、「佐々木さんが描く農業の未来」についてお届けします。