IT企業が新規事業として農業に取り組んで失敗するまで【前編】

2024年05月30日
 
こんにちは!

Vitalizeの千葉支社で新規事業を担当している松原です!
今回は、農業事業についてお話ししたいと思います。

以前、こちらの記事でVitalizeが農業に参入した経緯を書きました。
IT企業が農業に参入した理由




上記は2022年の取り組みで、参入と言っても営利活動は行わず、まずは自分達で試しに作物を作っただけという状態でした。
しかし、2023年からは事業として参入するために、土地を借りて農業委員会に申請を行い、拠点のメンバーも加わって本格的に生産へと乗り出しました。

結果、2023年は大失敗に終わりました・・・。

大失敗の2023年を振り返り、見えてきたものをお伝えしたいと思います。


目次


1.事業開始時の見通し
2.一向に収穫が出来ない作物
3.失敗した新規事業


1.事業開始時の見通し


以前の記事でお伝えしましたが、私達は千葉市若葉区で、農業を少しでも盛り上げることが即ち地方創生に繋がると考えていました。
地方で新しい仕事を作るのは簡単ではありません。
しかし、今まであった仕事をより効率的に運営し、そして、そこに付加価値を持たせることができたら雇用が広がるのではと考え、農業は可能性がある!と判断しました。

正直、事業経験が多少なりともある私達がやれば、

「苦労はするが軌道に乗せることが出来るだろう。農業人口の高齢化はそこかしこで聞くし、若い自分達が本気でやれば、今以上にもっとやれるのではないか」

という根拠の無い自信もありました。

ここまでを聞いて、農業関係者からは

「バカ言ってんじゃないぞ」
「農業を舐めるな」

という言葉が飛んできそうですね。

まさにその通りの結果になりました・・・。ごめんなさい。

見通しを誤った3つのポイントとして、

①若い
「若いならじゃんじゃん農作業できるんじゃないか!やる気があればできる!人員も増やせばやれるはず!!」

・・・メリットではありますが、年配の先輩方のほうが遥かに仕事ができます。
経験の無さを補えるようなメリットではなかったです。
また、人的リソースに頼るやり方はそもそも贅沢だということが後にわかりました。
(人件費の方が高い)


②事業経験
「他の事業でもPDCA回しながら改善できている!農業も同じようにできるはず!!」

当たり前の話ですが、事業は単純化すると、物を作る(仕入れる)→売るというサイクルを回し続けます。
私達は、物を作ることに想定を遥かに超えた負荷がかかり、その先の売ることに対して、ほとんど考えることができませんでした。
事業経験もへったくれもありませんね・・・。


③業界知識の無さ
「新参者だが、周りを巻き込んでいけば花開くはず!地域にはたくさんの先輩方がいらっしゃる!!」

当然ですが、参入する業界の市場調査は必要です。
私達は素人同然なので、一部外部の方々の協力を仰ぎましたが、自分達に知識が無さ過ぎて・・・。
アドバイスをもらっても判断軸が無い状態でした。
これは後々分かったことですが、農業では隠れた前提がいくつもあり、それを理解せずに話すことがままありました。(詳細は後述します)


2.一向に収穫が出来ない作物


2023年はじゃがいもやスイカ、パパイヤ、さつまいもの他、少しの夏野菜を育てました。

育てました。と書いてしまえば一行ですが、これは本当に、大変な労力を使いました。

農業は自然が相手です。

経験が無い私達は明日何が起こるかも想定できず、常に気を張り続けていました。




アクシデントにも多々見舞われ、

・業者さんが鶏糞の置き場所を人様の土地に置いてしまい、ユンボと素手で鶏糞を運びまくる
肥料として3トンの鶏糞を使用したのですが、置いて下さった場所が5mほどずれていて、ユンボを借りて3日かけて移動させました。

・2週間かけて設置したマルチが台風で吹き飛ぶ
台風の上陸が見込まれたある日、マルチが飛んでいくかもしれないと思い対策をしました。
当日様子を見にいくと鯉のぼりのようになびく姿が・・・。
跡形もない状態になりそうだったので、台風の中必死に追加留めをしました。

・雑草の伸びるスピードが早過ぎて、一生草刈りをしている
草刈りを終えて、次に別の畑の草刈りをすると、最初に草を刈った畑が元の状態に・・・。
というのを永遠に繰り返し、草を全て刈り終えることがなく、近隣の方々に厳しいお言葉をいただきました。

etc...

といったことがありました。
どれも素人が成せる技(ミス)だった気がします。


そんな私達ですが、紆余曲折を経ながらどうにか収穫まで育てることができました。
少しずつ収穫をして、出来が良く販売する野菜も。

中でも、スイカは一番手間がかかりました。
心折れる作業もありましたが、それでも美味しいスイカを作りたい一心で育てていました。
実がついていよいよという時、全てを獣?に食べられてしまいました・・・。




スイカが育ってきても熟する前に穴開き状態になっているんです・・・。
獣避けの臭い剤を置いたり、物理的にスイカを守る籠を設置したり色々やりましたが、1つも収穫できませんでした。



スイカは一番の目玉作物だったので、流石にこれにはガックリきましたね・・・。


3.失敗した新規事業


2023年の年間の売上は10万円で終わりました。

それなりに時間も使いましたが、結果は正直ですね。
P/Lなど弾くまでもなく赤字事業。


自分のやり方がマズかったのは自明ですが・・・。
じゃあどうすれば良かったのか。
あれこれ考えましたが、まずは専任の人員だ!と、2023年11月、収穫した畑の片付けを一旦終えたタイミングで、地域の方1名を農業専任の社員として採用しました。

よく見通しも立っていない状態で人を雇えるな、と思われるかもしれませんが、農業を続けていくには、どう考えても専任の人がいないと厳しいという確信がありました。

畑の片付けをその方にやってもらいながら、私は初めて農業についてインプットをしまくりました。
そこから2ヶ月くらい、様々な本や文献を読み漁り、先輩方の話を伺ったりしました。

そうすると、2つのことが見えてきました。


①儲からない作物なんてない

ちょっと考えてみればそうですよね。
皆さんがスーパーで手にとっている作物は必ず作り手がいます。
その人が慈善事業で作っていない限り、持続可能な売上が立っているはずなのです。

ただ、その作物を作るにあたって、

  • どういう設備を持っているのか
  • どれぐらいの圃場があるのか
  • スタッフの知見の有無はどうなのか
こういったことを考えなければなりません。

自分達が持っている武器を考えて、最善の方法は何なのかを改めて考えました。


②知見の大切さ

今思えば当然なのですが、業界理解が足りないまま走るのは暗闇の中をライトもつけずに走るようなものです。
ライトもつけずに走っていた私ですが、何十冊と農業の本や雑誌を読み漁りました。

そうして業界への理解が少しずつ深まると、外部の方の話を聞いても隠れた前提が見えてくるようになりました。

「OOは儲かるよ!(ただし、面積が100aくらいあって、作付と収穫の機械があって、一人で全てを回すくらいにやったらね」

()内は隠れた前提ですが、以前は最初の部分を鵜呑みにしていました。
先輩農家さんは熟練の方々なので細かくは言いませんが、こういった形で実は隠れた前提みたいなものがいくつもあったんです。

失敗した経験とインプットする時間、そして見えてきた課題。


事業としてもっと次につながる作物を作りたい!


様々なヒアリングをした結果、私達の状況で農業をやるなら、これしかないのでは!という野菜に行き着きました。


熱く語ってしまい、気付いたら長くなってきましたね・・・。
それでは、続きは後編で! 
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